ちょっと前になりますが「オッペンハイマー」観てきました~。
クリストファー・ノーランが描く科学者オッペンハイマーの半生と、原爆開発の経緯や歴史的背景、人間模様。
前作「TENET」の洗礼を受けていたのでまたもや時系列シャッフルのノーラン節が炸裂だったらどうしよう、と身構えて見に行きましたが、今作は多少の時系列の交錯はありつつも分かりやすく実直に作られた映画でした。登場人物がやたら多くて混乱しがちになるものの、前情報無しでも理解しやすい構成になっていたかと思います。
この映画はあくまでも人類最恐の大量破壊兵器が何故作られるようになったかの過程とオッペンハイマーの人物像にフォーカスしており、その為原爆やアメリカ側の被害、ナチスのユダヤ人迫害などの描写は恐らく意図的に描かれていません。
原爆開発プロジェクトの総責任者となったオッペンハイマーは、ドイツに先んじて完成させなければいけない政府からの圧力、ユダヤ人としての自負、何より科学者としての探究心などで、開発された核兵器が最終的には殺戮に使用されると言う事実をずっと見て見ぬふりをしながら研究に邁進していきます。ここら辺の彼の表情と不安定さの描写が絶妙で見ている側もどんどん彼の体験に没入していく演出になっています。
そしてとうとう実用前の核実験(トリニティ実験)が成功し関係者が歓喜にわく中、オッペンハイマーだけが人類が超えてはならない一歩を踏み出してしまったことに気付く場面、ここの演出と映像は圧巻でしたね~。
そしてそこから彼の葛藤が始まっていくわけですが。
この映画で何より印象的だったのは、人類初の試みである核実験の為、原爆を爆発させた瞬間に熱の連鎖反応が地球上の大気に引火する可能性が「ほぼゼロ」、つまりゼロでは無いことが関係者たちの中で話されていたことです。
ボタンを押した直後に地球が滅亡するかも・・・それでも最終的にはボタンをを押す決断をした科学者たちと米国政府。いや~恐ろしいですね。
そしてこの件に関してのオッペンハイマーとアインシュタインの会話が、鳥肌!必見です。
ちなみにこの映画でロバート・ダウニー・Jrはアカデミー助演男優賞を取りましたが、彼のファンとしては「この映画で?」って疑問は残りました。いや演技は素晴らしいんですけどもそれでも。と言うか全体的に緊張感の続く引き込まれる構成であっという間の3時間の中で、彼のメインのパートだけはやや冗長と言うか退屈気味だったのがちょっと残念でした。
とは言え「面白い映画」と言う枠組みでは無くとも、間違いない傑作、見て良かった映画です。
まだ公開中ですので、気になっている方おススメです♪